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医療とフィットネスをつなぐスペシャリスト|【健康運動指導士】資格について徹底解説

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2025.12.4

みなさんこんにちは!ノバス代表の脇坂です。

パーソナルトレーナーと一口に言っても、資格にはさまざまな種類があります。その中でも、今回取り上げる 「健康運動指導士」 は、他のトレーナー資格とは一線を画す存在です。

というのも、この資格はフィットネスの枠を超え、医療や行政と連携しながら生活習慣病予防や健康づくりを推進する専門家を養成するための国家資格レベルの位置づけを持つからです。ジムやクラブでの指導だけでなく、病院・行政・企業の健康増進事業など幅広い現場で必要とされており、「運動と医療をつなぐ役割」を果たせる点が最大の特徴といえます。

本記事では、健康運動指導士の基本情報から学べる内容、取得のメリット、活躍できるフィールド、他資格との違いまで詳しく解説していきます。


健康運動指導士の基本情報

健康運動指導士は、公益財団法人 健康・体力づくり事業財団(通称:健康・体力づくり財団) が認定する資格で保健医療関係者と連携しつつ安全で効果的な運動を実施するための運動プログラム作成及び実践指導計画の調整等を行う役割を担う者をいいます。1988年からスタートし、厚生労働省スポーツ庁とも密接に関わりながら運営されている公的資格で、フィットネス業界だけでなく行政・医療業界からも高い評価を得ています。

認定団体

  • 主催:公益財団法人 健康・体力づくり事業財団
  • 後援:文部科学省・厚生労働省

受験資格

健康運動指導士の受験資格を得るためには、

  • 健康運動指導士養成校のカリキュラムを修了する
  • 健康運動指導士養成講習会という講座を受講する

上記2つの方法があります。

健康運動指導士養成校の場合

指定された養成校(4年制大学)で養成講座を修了する方法があります。養成校は全国にあり、現在71校が認定されています。スポーツや健康に関連する学部を持つ大学が多く、地方の大学も含まれます。また、栄養士や管理栄養士の養成施設で受験資格を得られる場合もあります。

健康運動指導士養成講習会の場合

まずは受講申込書を提出して書類審査を受ける必要があります。受講資格があるのは以下に該当する人です。

  1. 歯科医師、助産師、看護師、准看護師、薬剤師、臨床検査技師、栄養士、理学療法士、作業療法士、柔道整復師、きゅう師、はり師、あん摩マッサージ師の国家資格を有し、4年制大学卒業者
  2. 1と同等以上の能力を有していると財団が特別に認定する人
  3. 受講資格4~6を満たしている人
  4. 医師、保健師あるいは管理栄養士の資格を取得している人
  5. 4年制体育系大学(教育学部体育学系を含む)卒業者
  6. 健康運動実践指導者の称号を取得している人、スポーツプログラマー・フィットネストレーナー・アスレティックトレーナーのいずれかの資格を取得している人、GFIエグザミナーまたはGFIディレクターの資格を取得している人

以上の受講資格ごとに、受講者の資格や学歴に応じて必要単位数が異なります。

  • 1、2、3の受講資格…104単位:医療系資格を有し、4年制大学卒業者
  • 4の受講資格…70単位:保健師、管理栄養士
  • 5の受講資格…51単位:4年制体育系大学卒業者
  • 6の受講資格…40単位:健康運動実践指導者やスポーツプログラマーなど

※講習会は前期・後期に分かれており、全てのカリキュラムを年度内に修了する必要があります。

こうした条件が設けられているのは、『専門性の高い内容を扱うため、基礎知識が必須』とされているからです。

試験概要

健康運動指導士の資格を取得するためには、指定の養成講習会を修了し、筆記試験に合格する必要があります。

  • 試験形式:四肢択一のマークシート方式
  • 出題範囲:健康管理概論、健康づくり施策概論、生活習慣病(NCD)、運動生理学、機能解剖とバイオメカニクス(運動・動作の力源)、健康づくり運動の理論、運動障害と予防、体力測定と評価、健康づくり運動の実際、救急処置、運動プログラムの実際、運動負荷試験、運動行動変容の理論と実際、運動とこころの健康増進、栄養摂取と運動

全ての内容を網羅しておく必要があります。

  • 合格率:約80%

平均的に合格率も高いため、難易度も高い資格ではないかと思いますが、しっかりと勉強はしておく必要があります。

パーソナルトレーニング

学べる内容

健康運動指導士は「健康寿命を延ばすプロ」としての知識とスキルを学ぶ資格です。NSCAやNESTAが「トレーニングの専門性」に重きを置いているのに対し、こちらは「生活習慣病の予防」「健康維持」「リスク管理」に特化しています。具体的には以下のような分野を深く学びます。

運動生理学と解剖学

  • 心肺機能、筋肉、骨格、神経系の働きを理解
  • 高齢者や生活習慣病患者に適した運動強度の設定

疫学・公衆衛生学

  • メタボリックシンドロームや糖尿病などの発症メカニズム
  • 運動による予防効果や介入方法

栄養学

  • エネルギー代謝や栄養素の働き
  • 運動と食事の関係を踏まえた生活習慣改善の提案

運動処方とプログラム設計

  • 個々の体力・病歴・生活習慣に応じた運動プログラム作成
  • 有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟性向上のバランスを考慮

リスク管理・安全対策

  • 心疾患リスクの評価
  • 運動中の事故防止と応急処置

このように、トレーナーというより 「健康コンサルタント」や「予防医療のパートナー」 としての役割を果たせるスキルが身につきます。


資格取得のメリット

私自身、この健康運動指導士の資格を保有していますが、実際に学んだ内容や現場での活かし方を振り返ると、改めてその価値の大きさを実感しています。

まず一つは、医療や行政との連携が可能になる点です。病院や自治体が主催する健康づくり事業に参加した際、この資格を持っていることで医師や保健師と同じ土台で話ができ、信頼を得やすかった経験があります。特に糖尿病予防教室や介護予防プログラムなどでは、資格の有無が参加条件になることもあり、専門性を証明する強力な武器となります。

次に、高齢化が進む日本において、この資格は確実にニーズが高まっていると感じます。ジム運営をしていても「体型を変えたい」というニーズと同じくらい、「健康で長生きしたい」という声を多く耳にします。そうした方々に対し、医学的根拠に基づいた運動指導を行えることは大きな信頼につながります。

さらに、この資格はキャリアの幅を広げてくれます。私はパーソナルジムを中心に活動していますが、健康運動指導士を取得してから、企業の健康経営プログラムや地域の健康教室など、ジム以外の場でもお声がけをいただけるようになりました。つまり、単なるトレーナー資格にとどまらず、「社会的に必要とされる存在」として活動できるのが、この資格の最大のメリットだと感じています。

資格を活かせるフィールド

パーソナルトレーニング

健康運動指導士の資格を持っていると、以下のような現場で力を発揮できます。

  • フィットネスクラブやパーソナルジム
  • 病院やクリニック(リハビリや生活習慣病予防プログラム)
  • 介護施設・デイサービス(高齢者の運動指導)
  • 自治体や行政の健康づくり事業
  • 企業の健康経営プログラム(社員向け運動セミナーなど)

特に、ジム運営をしている私の目線から言えば、この資格を持つことで「医療や行政とのつながりを持てる」という点は非常に大きなメリットです。

一般的なパーソナルトレーナー資格では、どうしても活動の場がフィットネスクラブやパーソナルジムに限られてしまう傾向がありますが、健康運動指導士を取得すると、病院やクリニックの運動教室、自治体主催の健康増進事業、地域包括支援センターの介護予防プログラムなど、まったく別のフィールドで活動できる可能性が広がります。

我々ノバスも健康経営サポート事業、健康ソリューション事業などパーソナルジム事業以外にも幅広く活動しています。ジム内だけでなく、社会全体の健康づくりに貢献できることは、トレーナーにとって大きなやりがいであり、この資格が「活動の幅を広げる武器」になる理由でもあります。


他資格との違い

数あるトレーナー資格の中で、健康運動指導士が最も特徴的なのは「対象者と目的の幅」にあります。例えば、NSCA-CPTやNESTA-PFTは主にフィットネス利用者やボディメイクを希望する方を対象としており、体型改善や基礎体力の向上にフォーカスしています。NSCA-CSCSはさらに専門性が高く、アスリートの競技力向上に特化した資格であり、スポーツ現場でのパフォーマンス強化を得意とします。

一方で、健康運動指導士はまったく異なる角度からアプローチします。対象となるのは生活習慣病の予防を目的とする人、高齢者、リハビリを終えたばかりの人など、「健康寿命を延ばす」ことが主眼です。

つまり、CPTやCSCSが「パフォーマンス向上」を武器にしているのに対し、健康運動指導士は「生活の質を向上させる」専門家なのです。私自身、ジム経営を通じて痛感しているのは、フィットネス業界で長く生き残るためには、この「健康志向」と「パフォーマンス志向」の両方を理解し対応できることが不可欠だということです。

どちらか一方だけでは対応できないクライアント層が必ず出てきます。だからこそ、健康運動指導士の学びを取り入れることで、より幅広い層に信頼されるトレーナーへと成長できると考えています。


まとめ

健康運動指導士は、医療とフィットネスをつなぐ唯一無二の資格です。生活習慣病の予防や高齢者の健康づくりといった社会的に重要な分野で活躍でき、今後ますます需要が高まるでしょう。

パーソナルトレーナーとして活動したい方にとっては、NSCAやNESTAの資格と併せて取得することで、「ボディメイクから健康増進まで幅広く対応できるトレーナー」としての強みを持てます。

経営者目線でも、健康運動指導士を持っている人材は、病院・行政・企業などとの連携に強く、ジムの信頼性や社会的評価を高めてくれる存在です。

「人の体を変える」だけでなく、「人の健康寿命を延ばす」ことに興味がある方にとって、健康運動指導士は非常に価値のある資格だと断言できます。

記事執筆 監修者

ノバス 代表 脇坂諭

株式会社ノバス 代表取締役 脇坂諭
パーソナルジム ノバス代表 / キャリア採用担当
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【キャリア】
鹿屋体育大学 体育学部 体育・スポーツ課程を卒業後、サッカー選手として現J3カマタマーレ讃岐に4年間在籍。

引退後、トレーナーとしてのキャリアをスタート。体育スポーツ学の専門性とアスリートとしての経験を活かし、2015年に株式会社ノバスを創業。

パーソナルジム事業に加え、フランチャイズ本部、プロダクト開発、健康ソリューション事業などを展開。

ノバスの理念である「ジムのある暮らしを、一生モノの習慣に」を体現するため、オンラインコンテンツ「ノバスオンライン」の開発など、継続支援システムを構築。

香川県や高松市といった行政との提携実績があり、企業の健康経営支援サポートや、各種セミナーやメディア出演(KSB瀬戸内海放送15回)を通じ、健康の普及に尽力している。

【経歴】
現J3カマタマーレ讃岐 選手

【学歴】
鹿屋体育大学 体育学部 体育・スポーツ課程(学士号)

【保有資格】
健康運動指導士
保健体育教員免許
健康経営アドバイザー

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