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医療国家資格【理学療法士】について解説|強みとトレーナーキャリアへの活かし方

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2025.12.6

みなさんこんにちは。ノバス代表の脇坂です。

以前、「健康運動指導士」について、その特徴や活かし方を解説しましたが、同じ「身体の専門職」といっても、さらに医学的な領域に深く踏み込み、治療やリハビリを担う国家資格があります。それが今回ご紹介する 「理学療法士(PT)」 です。

理学療法士は、医療系の国家資格の中でも特に人気が高く、トレーナー資格と比較されることも多い資格で、フィットネスやスポーツ現場に限らず、病院・介護施設・行政など幅広い領域で活躍できる専門職であり、「医学的に人の身体を改善できるプロフェッショナル」と言えます。

健康運動指導士やパーソナルトレーナー資格と比べても、学べる内容・対象者・働けるフィールドが大きく異なります。この記事では、理学療法士の基本情報から学べる知識、資格取得のメリット、活躍できるフィールド、そして他資格との違いまで、経営者としての視点も交えて解説していきます。


理学療法士の基本情報

理学療法士(Physical Therapist/PT)は、国家資格として厚生労働省が認定するリハビリ専門職です。けがや病気、加齢などによって身体機能が低下した人に対し、運動療法や物理療法を用いて機能回復を図る役割を担います。

認定団体

  • 厚生労働省(国家資格)
  • 日本理学療法士協会が活動を統括

資格取得までの流れ

理学療法士になるためには、養成校(大学・専門学校)で 3〜4年間の専門教育 を受け、国家試験に合格する必要があります。

  • 受験資格:理学療法士養成課程を修了した者
  • 試験形式:筆記試験(マークシート)
  • 合格率:約85〜90%前後

学費は数百万円単位と大きな投資が必要ですが、その分、国家資格としての社会的信頼度や就職先の安定感は圧倒的です。


学べる内容

パーソナルトレーニング

理学療法士の養成課程では、医学的な基礎から実践的なリハビリ技術まで幅広く学びます。

医学的基礎知識

  • 解剖学、生理学、運動学、病理学など
  • 神経系や循環器系、整形外科的疾患の理解

評価と診断

  • 身体機能の測定(筋力・柔軟性・バランス・歩行など)
  • 姿勢や動作の分析による問題点の特定

運動療法

  • 筋力回復や可動域改善のための運動指導
  • 歩行訓練やストレッチング、関節可動域訓練

物理療法

  • 温熱療法、電気刺激療法、超音波療法など

心理社会的サポート

  • 障害を抱える患者への心理的ケア
  • 社会復帰や生活動作改善のための支援

つまり、トレーナー資格で学ぶ「フィットネスのための運動学」よりもさらに深く、医学的な裏付けを持った知識と技術を習得できるのが理学療法士の強みです。


資格取得のメリット

私自身、ジム運営の中で理学療法士の方と関わる機会も多くありますが、経営者の立場から見ても、理学療法士資格を持つ人材は非常に価値が高いと感じます。

まず第一に、医療現場で唯一無二の立場を持てることです。リハビリ専門職として病院やクリニックでの需要が高く、就職先に困ることはほとんどありません。特に整形外科や脳神経外科では理学療法士が欠かせない存在であり、安定したキャリアを築けます。

次に、フィットネス現場での信頼度が圧倒的に高いことです。例えば、怪我や痛みを抱えたクライアントに対し、一般のトレーナーでは対応が難しいケースでも、理学療法士であれば医学的な知識を活かした指導が可能です。

実際に私のジムでも理学療法士の資格を持つトレーナーが在籍していますが、その存在は非常に大きな安心材料になっています。例えば、膝や腰に慢性的な不調を抱えているお客様は、「トレーニングで悪化しないか不安」という思いを必ず持っています。しかし、理学療法士が関わることで「医学的に安全な範囲で動ける」という信頼が生まれ、安心して運動を継続できるのです。

また、リハビリ後の段階にある方や、整形外科に通院中の方にとっても、理学療法士の視点が加わることで「病院からジムへの橋渡し」がスムーズに行えます。理学療法士は解剖学や運動学に基づいた根拠あるアプローチを提供できるため、医療従事者からの信頼も厚いのが特徴です。

さらに経営者として感じるのは、理学療法士が在籍していることがそのまま「ジムのブランド力」につながるということです。お客様からすれば、「単なるトレーニング施設」ではなく、「医療的な専門性を備えた安心できる施設」と認識してもらえ、集客やリピート率の面でも大きなプラス効果があり、特に健康志向の高い層や高齢者層にとっては、選ばれる大きな決め手になります。

このように理学療法士を取得していると、個人だけではなく、所属するジム全体の信頼度や付加価値を高める要素になると実感しています。

さらに、キャリアの幅が広がる点も大きな魅力です。病院や施設だけでなく、パーソナルジム、訪問リハビリ、スポーツチーム、研究機関など、幅広いフィールドで活躍できます。私の知る理学療法士の中には、病院勤務を経て独立し、パフォーマンスアップを専門にしたジムを経営している方もいます。


活かせるフィールド

理学療法士が活躍できる場は非常に広く、以下のように医療からスポーツまで多岐にわたります。

  • 病院・クリニック(整形外科、リハビリ科など)
  • 介護施設・訪問リハビリ
  • スポーツチーム(アスリートのリハビリやコンディショニング)
  • パーソナルジム(怪我予防や姿勢改善に特化した指導)
  • 行政・地域包括支援センター(介護予防事業や健康教室)
  • 教育・研究機関

理学療法士が活躍できるフィールドは非常に幅広く、まずは医療現場が中心になります。病院やクリニック、リハビリ専門施設では、怪我や病気で身体機能が低下した患者さんに対し、運動療法や物理療法を用いて回復をサポートします。整形外科や脳神経外科、循環器系のリハビリなど、活躍の場は多岐にわたります。

さらに、介護や福祉の分野でも理学療法士は欠かせません。高齢者施設やデイサービスでの転倒予防、日常生活動作の改善など、生活の質を守るサポートを行います。日本の高齢化を考えると、この分野での需要は今後ますます高まっていくでしょう。

近年では、スポーツ現場やフィットネス業界でも理学療法士の存在が求められています。プロ・アマを問わずアスリートのパフォーマンス向上や怪我からの復帰支援、あるいは一般のフィットネスクラブでの「安全に体を動かす指導」など、医療知識を活かした活動が可能です。

このように理学療法士は、医療・介護・スポーツ・フィットネスと多方面で活躍できる稀有な国家資格です。自身のキャリアプランに合わせて活動の場を選べる点は、大きな魅力だと言えるでしょう。


他の資格との違い

理学療法士と他のトレーナー資格との最大の違いは、「国家資格として医療行為に直結する専門性を持っている」という点です。たとえば、NSCA-CPTやNESTA-PFTといったパーソナルトレーナー資格は、主にフィットネス利用者やボディメイクを目的とする方を対象に、運動指導を行うスキルを養います。科学的知識に基づいたプログラム設計が可能ですが、医療行為そのものには関われません。

一方、NSCA-CSCSのような資格はアスリートの競技力向上に特化しており、パフォーマンスアップや競技復帰を目指す現場で強みを発揮します。これに対して理学療法士は、競技力向上を目的にするのではなく、「失われた機能を回復させる」「再発を防ぐ」といった医療的な観点からのアプローチが中心です。つまり対象者はアスリートだけでなく、怪我や疾患を抱えた幅広い層に及びます。

また、健康運動指導士や健康運動実践指導者のように、生活習慣病予防や健康増進を支える資格もありますが、これらはあくまで「予防」が目的です。理学療法士はそこから一歩踏み込み、怪我や病気を抱えた方に対して、病院や医療機関でのリハビリを直接行える点で大きく異なります。

経営者として現場を見てきた経験から言うと、パーソナルトレーナー資格や健康運動系資格は「健康を維持・高めるための指導」、理学療法士は「失った機能を取り戻すための治療的支援」という立ち位置です。どちらが優れているという話ではなく、役割の違いが明確にあるからこそ、両方の知識を組み合わせて学ぶことで、より幅広いニーズに応えられるトレーナーになれると感じています。


まとめ

理学療法士は、医療現場からスポーツ現場まで幅広く活躍できる、国家資格ならではの信頼性と専門性を持つ職種です。フィットネス系のトレーナー資格と比べると取得までに時間も費用もかかりますが、その分、安定した就職先と社会的評価、そして幅広いキャリアの可能性を手に入れることができます。

私自身、ジム運営をしていて感じるのは、理学療法士を持っているトレーナーはお客様からの信頼が圧倒的に高いということです。怪我をした人から健康な人まで、安全かつ効果的にサポートできる専門性は、今後のフィットネス業界でもますます求められるでしょう。

「医療とフィットネスをつなぐ存在になりたい」「より専門的に人の身体を改善したい」そう考える方にとって、理学療法士は間違いなく挑戦する価値のある資格だと断言できます。

記事執筆 監修者

ノバス 代表 脇坂諭

株式会社ノバス 代表取締役 脇坂諭
パーソナルジム ノバス代表 / キャリア採用担当
採用HP:新卒、キャリア採用のご案内

【キャリア】
鹿屋体育大学 体育学部 体育・スポーツ課程を卒業後、サッカー選手として現J3カマタマーレ讃岐に4年間在籍。

引退後、トレーナーとしてのキャリアをスタート。体育スポーツ学の専門性とアスリートとしての経験を活かし、2015年に株式会社ノバスを創業。

パーソナルジム事業に加え、フランチャイズ本部、プロダクト開発、健康ソリューション事業などを展開。

ノバスの理念である「ジムのある暮らしを、一生モノの習慣に」を体現するため、オンラインコンテンツ「ノバスオンライン」の開発など、継続支援システムを構築。

香川県や高松市といった行政との提携実績があり、企業の健康経営支援サポートや、各種セミナーやメディア出演(KSB瀬戸内海放送15回)を通じ、健康の普及に尽力している。

【経歴】
現J3カマタマーレ讃岐 選手

【学歴】
鹿屋体育大学 体育学部 体育・スポーツ課程(学士号)

【保有資格】
健康運動指導士
保健体育教員免許
健康経営アドバイザー

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